小笠原諸島は週に1便の定期船で、24時間かけて漸くたどり着く島々である。
(詳細は小笠原村ホームページを参照ください)
そこで暮らす人々を支える診療所の先生や看護師さんに話を聞く機会があったので、ここに残そうと思う。
離島医療に興味がある医療従事者や、離島への移住を考えている人の参考になればいいな。
(*医療従事者や関係者から聞いた話を元に記事にしていますが、一個人の見解です)
<若い小笠原村の住人>
まずおどろいたのは、平均年齢が約40歳と若い。
どれくらい若いかというと、東京都内の市町村で最も若い!わかりづらい?
65歳以上の高齢者よりも、未成年者の15歳未満の子供の方が多い。
若い移住者が多くて、平均年齢を下げているようです。
<なんでもこなす総合診療>
島の診療は総合診療、小児はもちろん、妊婦検診までも、3名程度の常勤の総合診療医がある程度こなすとのこと。
産婦人科や小児科などの専門医は年に2〜6回程度しかこないため、それ以外は全て常勤の先生が対応しています。すごい
<島内でできる検査>
検査はレントゲン、ポータブル、造影CT、消化器内視鏡検査などが施行でき、本土で連携している総合病院でも画像を一緒にみながら相談ができるとのこと。
採血もある程度でき、病理検体は定期船で内地へ送ります。結果は1〜2か月はかかるとのこと。
ちなみにまだ電子カルテではない。
<緊急時/診療所でできない医療が必要な場合>
診療所で行えない様な緊急の治療が必要な場合は自衛隊へ出動要請をし、内地へ飛行艇やヘリで搬送することになり、出動要請から搬送先への到着までは約9時間!
緊急搬送といっても非常に時間がかかります。
このため、専門的な検査や治療が必要な人は、放置せずに早めに定期船で内地の病院へ受診する必要があります。
しかし定期船おがさわら丸は片道2万はしますし、一度内地へいくと、定期船の出航日までは宿泊先が必要となり、何かと出費がかさみます。
このため内地の病院へ紹介する場合は、速やかに専門的な検査や診察が受けられる様に病院と診療所の間で手筈を整えてから、いざ診療情報提供書を持参して定期船に乗り込む、といった工夫もしている様です。
<島内での出産はできない>
気になるのは島でお産ができるのか、ということですが、できません。
(つまり島にいる子供たちは内地出身、1か月健診後に島へ帰ってくるのだそう。)
妊婦さんは基本的には妊娠32週程度で内地へ行ってもらうとのこと。
妊娠中の異常の多くは妊娠初期か、後期で生じるためです。
初期や中期でも、切迫早産などは、わずかな兆候程度であっても早々から内服薬の開始や自宅安静、次の便で内地に移ってもらうなど、軽度のうちに対応することで、島内での早産や緊急搬送まで至るケースを防いでいます。
もちろん産婦人科医の常勤はいないため、島でたった一人の助産師さんの日々の指導が妊婦さんと胎児を救っているんですね。
幸いほとんどが移住者のため、内地では実家への里帰りや親戚宅でお世話になれれば良いですが、内地に頼るところがない人は大変、、、
ちなみに年間の母子手帳発行は20件ほどとのこと。
<輸血は常備あり>
輸血製剤は使用期限があり、使われなかった血液製剤は無駄になってしまいます。
小笠原ではブラッドローテーションという形で、定期船毎便にO型RBC4単位が温度管理された状態で輸送されます。使われなかった血液は次の便で内地へ戻り、輸血の使用頻度が高い病院で使ってもらうというシステムです。
このローテーションシステムができてから、輸血製剤を無駄にせずに、島にも常備することができる様になりました。
<看護師はベテラン揃い>
看護師は十数人おり、とにかくなんでもこなすとのこと。本当になんでもこなすそうです。
このため、看護師の採用には十分な経験を重視している様です。
<まとめ>
小笠原諸島で学んだことをまとめると以下2点
● 健康な人でないと移住したら大変かも
● 高度医療機関から非常に離れた場所だからこその工夫が多数あり
(*医療従事者や関係者から聞いた話を元に記事にしていますが、一個人の見解です)