上司から依頼された仕事を提出したとき、こう指摘を受けたことがある
「全力でやって持ってこい、そこで初めて話ができる!」
それは私にとって全く初めての仕事だった
できるだけ頑張ったつもりだが、そもそもどうすべきかすらわからない
(ほぼやったことのない仕事で要領もわからないのに、指導もしてくれないのに。まずは手本を見せてくれよ)
そう思ったのを覚えている
私のスタンスは、まずは見本を見せてくれ!そしたらなんとかできるから!
というものだった
はじめてではできるはずがない
できなくてあたりまえだ
ならい、繰り返し、ようやくできるようになる
だから、私の後輩への指導法も同じだ
はじめてのことは、まずはやってみせる
まさに山本五十六のやり方である
「やってみせ 言って聞かせて させてみて ほめてやらねば 人は動かじ」
ただし、この上司のやり方は違った
はじめてでも自分でなんとかして最高のものをつくる、習ってなくても時間がかかっても全身全霊で作り上げる
両者の違いは何か
明らかに違ったのは温度差であったろう
情熱の違いであったと思う
山本五十六のやり方は
興味のないことに興味を持たせるやり方
仕事ができるようになって、仕事が好きになれば、その後は自分で成長し始める
そもそも仕事が好きにならなければ成長しない、辞める可能性だってある
上司のやり方は
仕事に全力で取り組め
好きか嫌いかなんか関係ない
仕事をやりきれ
なぜ自分が後輩を指導するときに山本五十六のやり方をしていたのか
それは、おそらく
後輩が仕事を好きにならなければ、辞めてしまうと思っているからだろう
ろくに指導もされず、できなければ怒られる、そういう仕事だったら、他にいくらでも働き口はある
そういう時代だ
だからまずは仕事を好きになる、興味を持つことが大事だと信じて、後輩を手取り足取り育てていた
ただし裏を返せば、
自分こそ、面白くなければいつでも辞めるつもりだからこんな考え方だったのかもしれない
自分ですら、きっかけがあれば辞めようと思っていたからこそ、後輩もきっかけがあれば辞めると信じ、きっかけを与えないように必死だったのかもしれない
迷いがあったのだ
今の職場で良いのか
山本五十六も、部下が仕事を好きにならなければ成長しないし、辞めるだろうと考えていたのだろう
だから、仕事を好きになってもらうことから始めたのであろう
しかし山本も私のように迷いがあったのか?
それは違うと思う
私と根本的に違うのは、山本五十六は軍人であり、戦争で負ければ家族が死ぬ状況であったということ
そんな過酷な状況で、部下の中にも、戦争大好きな向上心に溢れた者ばかりではなかっただろう
それはそれは、厳しく指導したら逃げ出すものも当然いる
逃げ出したくなるような状況で人を動かすために、褒めて伸ばすやり方を選んだのかもしれない
では上司はどうか
迷いがないのだ
課せられたものを全力でやる
指導があろうとなかろうと
自分で成長してきたタイプなのだろう
辞めてどこかへ行こうなどと思わず、ひたすら前進してきたのだろう
では、どちらが伸びるかといえば、一目瞭然だ
その道のプロは皆、習わなくても全力を出し続けた者たちだ
まず迷いを捨てなければ